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ハーブガーデン

アキコ先生
コロナ禍で東京都心から湘南へ移住
医薬品の研究開発を経て現在はハーブとアロマの講師
ハーブやアロマの健康効果や使用方法、育成中ハーブの成長記録等をお届けします

コーラは健康飲料?

コカ・コーラは、ペンバートン博士の開発当初は、ワインにコカインとコーラのエキスを調合した『フレンチ・ワイン・コカ』として、精力増強や頭痛の緩和に効果のある薬用酒として1885年に販売されましたが、やがてコカイン依存症が問題となるとともに、ワインに代えて、炭酸水の風味付けのシロップとして『コカ・コーラ』と名づけ1886年に発売されました。
現在では、コーラは清涼飲料水としての位置付けですが、開発当初は健康飲料だったわけです。

  • コーラノキ Cola nitida アオギリ科
  • 種子(コーラナッツ)にカフェインを含む 疲労回復作用
    現在のコーラにはこの植物は使用されていませんが、多くのコーラ飲料にはカフェインが配合されています。
  • コカノキ Erythroxylon coca コカノキ科
  • 葉にコカインを含む 局所麻酔作用
    毒性が強く依存性があることから麻薬に指定されています。
    現在のコーラにはもちろん使用されていません。

最近はクラフトコーラ(手作りコーラ)が人気で、スパイスやハーブを使ってコーラの味を再現した製品が数多く販売されるようになり、ご当地コーラとして限定販売される商品も多数あります。また、家庭でも簡単にコーラシロップを作れるレシピが、インターネット等で多数公開されています。

クラフトコーラに必ずと言っていいほど使われるスパイスには、以下のようなものがあります。

  • クローブ Syzygium aromaticum フトモモ科
  • 生薬名:丁子 チョウジ
    主要成分:オイゲノール
    作用:抗菌、鎮痛、局所麻酔
  • カルダモン Elettariaa cardamum ショウガ科
  • 生薬名:小荳蔲 ショウズク
    作用:消化機能促進、鎮痛、鎮痙
  • シナモン Cinnamomum verum, Cinmamomum cassia クスノキ科
  • 生薬名:桂皮 ケイヒ
    主要成分 桂皮アルデヒド
    作用:消化機能促進、抗菌
  • ジンジャー Zinguber officinale ショウガ科
  • 生薬名:生姜 ショウキョウ、乾姜 カンキョウ
    主要成分: ジンゲロール、ショウガオール
    作用:消化機能促進、消炎・鎮痛

いずれも生薬として漢方薬などに使われるスパイスで、精油成分(芳香成分)を含み、消化器機能を向上して食欲を増進させたり、抗菌作用によって食中毒の予防効果が期待できるスパイスです。コーラは夏場に飲むことが多い飲み物ですが、これらのスパイスを使って手作りしたコーラは、夏バテで食欲が低下したり、消化器系が弱っているときに効果的な飲み物といえるでしょう。また、前述のコーラノキ(コーラナッツ)を使わずに作った手作りコーラはノンカフェインですので、カフェインが苦手な方にもおすすめです。上記の他にも、お好みにより、ナツメグ、ブラックペッパー、コリアンダーシード、カイエンペッパー、スターアニス、アニスシードなどのスパイスを加えてアレンジも可能です。柑橘類も、ライムやオレンジなどお好みのものを加えてオリジナルのコーラを作るのも楽しいですね。

クラフトコーラの作り方

  • 【基本の材料】
  • 水…200ml
  • 三温糖…100g
  • クローブ…20粒
  • カルダモン…10粒 (はさみや乳鉢等でつぶしておく)
  • シナモンスティック…2本 (3㎝程度にちぎる)
  • バニラビーンズ ※1…½本 
    (鞘を開いて中身をこそげる、鞘と中身は両方使用)
  • レモン ※2(果皮、果汁)…1個 
    (果汁を絞り、残りを薄切りに)
  • 生姜…1かけ (薄切り)
  • ※1 バニラエッセンスで代用可能
  • ※2 皮を使用するため、防黴材不使用のもの
材料写真
  1. 【作り方】
  2. レモン果汁以外の材料を火にかけ、沸騰したら弱火で10分間煮る
  3. 粗熱が取れたら、レモン果汁を加え、清潔な容器に移して冷蔵庫で1晩漬け込む
  4. 茶こしで濾過して清潔な保存容器に移す(シロップは冷蔵庫で2週間程度保存可能)
調理写真
  1. シロップを炭酸水で割っていただく
完成写真

ハーブの香りを虫よけに

植物は自分自身が虫から食べられるのを避けるため、虫が嫌がる香り(精油成分)を作り出しています。そのため、精油を使って虫よけスプレーや虫よけキャンドルを作ったり、虫よけ効果のあるハーブを庭やベランダに植えて虫の侵入を防いだりという使い方ができます。

虫よけ効果があるとしてよく知られているハーブに、レモングラス、ユーカリレモン、ゼラニウムなどがあります。これらのハーブにはどのような成分が含まれているのでしょうか。
レモングラスに含まれるシトラール∗(ゲラニアール、ネラール)、ユーカリレモンに含まれるシトロネラ―ルという成分は昆虫忌避(虫よけ)効果のある成分としてよく知られています。化学構造的にはいずれもテルペン系アルデヒド類に属する成分で、レモンに似た感じの力強い香りがします。
よく似た名称の成分でゼラニウムに含まれるシトロネロールという精油成分がありますが、こちらも虫よけの効果が高い成分で、化学構造的にはシトロネラールのアルデヒドの部分がアルコールに置き換わっています。香りは上述のシトラールやシトロネラールに比べてマイルドで甘い香りです。ゼラニウム精油全体としてもローズ・オットー精油によく似た華やかなフローラルな香りがします。
いわゆるハーブの虫よけの香りが苦手な方は、おそらくシトラールやシトロネラ―ルの強い香りをイメージされていると思うのですが、シトロネロールが含まれるゼラニウムの香りは虫よけ効果がありつつ優しい香りなので、是非一度お試しいただければ。

化学式

∗シトラール:ゲラニアール(trans)とネラール(cis)は幾何異性体で通常混在しており、両者を合わせてシトラールと呼びます。シトラールという成分ではありません。

  • レモングラス Cymbopogon citratus イネ科
  • 主要成分:シトラール(ゲラニアール40~50%、ネラール30~50%)
    効果:鎮静、抗炎症、昆虫忌避

    レモングラス
    畑で育成中のレモングラスです。
    高温多湿好きなので、小さな苗から2か月でモリモリ成長中。
    畑に植えていても、ほとんど虫がつきません。

  • ユーカリ・レモン Eucalyptus citriodora フトモモ科
  • 主要成分:シトロネラ―ル(70~85%)
    効果:抗炎症、鎮痛、鎮静、昆虫忌避
  • ゼラニウム Pelargonium graveolens フウロソウ科
  • 主要成分:シトロネロール(25~40%)、ゲラニオール、リナロール
    効果:収れん、抗菌、昆虫忌避

    ゼラニウム
    畑で育成中のゼラニウムです。
    春には小さなピンク色の花を咲かせます。
    ゼラニウムには園芸品種が多いので、学名を確認して購入しましょう。
    周囲には甘い香りが漂っていて、全く虫がつきません。

ハーブとアロマで花粉症対策

スギ
花粉をたっぷり蓄えた杉の雄花

ドイツでは春季療法として春のアレルギー対策に、ネトルやエルダーフラワーが良く用いられます。いずれも利尿作用があり、デトックス効果が高いことからアレルギー体質の改善に用いられます。また余分な水分を排泄することで鼻づまりなどのカタル症状を緩和してくれます。その他、ペパーミントなどのすっきりとした香りのハーブをブレンドしたり、ビタミンC補給のためのローズヒップなどをブレンドするのも良いでしょう。

  • エルダーフラワー Sumbucus nigra レンプクソウ科 花部
  • 成分:フラボノイド配糖体(ルチン、クエルシトリン)、ミネラル
    適応:風邪、利尿、抗アレルギー
  • ネトル Urtica dioica イラクサ科 葉部
  • 成分:フラボノイド(クエルセチン)、フラボノイド配糖体(ルチン)、ミネラル
    適応:花粉症やアトピーなどのアレルギー疾患、痛風、リウマチ

コアラとユーカリ
コアラとユーカリ

精油を使った花粉症対策としては、スーとした香り成分である1,8-シネオールを多く含むユーカリ・ラディアタやローズマリー・シネオールがおすすめです。免疫調整作用や、抗カタル、去痰作用があり、花粉症の症状緩和に非常に効果的です。ジェル基材やクリーム基材に混ぜて胸のあたりに塗布すると鼻の通りが良くなり、呼吸が楽になります。これらの精油はマスクスプレーなどにもおすすめです。

  • ユーカリ・ラディアタ Eucaryptus radiata フトモモ科 葉部
  • 成分:1,8-シネオール、α-テルピネオール、リモネン
    適応:花粉症、風邪
  • ローズマリー・シネオール Rosmarinus officinalis CT (Cineole)シソ科 花と茎葉
  • 成分:1,8-シネオール、α-ピネン、カンファー
    適応:花粉症、風邪

森の香りで花粉症を制する?
花粉症予防のための精油で、最近注目されているのが、トドマツ(モミ)の精油で、なかでも北海道モミにその効果が高いことが報告されています。
トドマツ(モミ)の精油には、β-フェランドレンという成分を含有しており、この成分に二酸化窒素の除去効果が認められています。花粉は汚染われた空気に含まれる二酸化窒素と結びついて、抗原性を増すことから、β-フェランドレンで空気を浄化することで、花粉症予防につながることが期待されています。空気の浄化にモミの香りを取り入れてみるのもおすすめですよ。

光毒性にご注意

太陽光線
太陽光線のうち200nm~400nmの波長の電磁波を紫外線(近紫外線)といいます。

医薬品の研究開発段階の毒性試験として「光毒性試験」というものがあります。光毒性とは、化合物が紫外線照射下で活性化されて、皮膚に炎症反応や色素沈着を引き起こすタイプの毒性のことです。光毒性を起こす医薬品は数多くありますが、特に湿布薬としてよく使われるケトプロフェンなどは光毒性があることから湿布薬や塗薬として使用時または剥がしてから数時間は日光に当てないよう注意が必要です。紫外線が強くなる春から夏にかけては、特に注意しましょう。

メディカルハーブやアロマにも光毒性を有する成分が含まれているものがあります。メディカルハーブでは、軽度~中等度のうつ症状の改善によく使用されるセントジョーンズワートの成分に光毒性作用があります。ヒぺリシンという赤い色素成分は脂溶性で、抗炎症作用や鎮痛作用があるため、セントジョーンズワートの浸出油は、炎症を抑える目的で外用で使用する場合があります。抗うつ作用を期待してハーブティを飲用する場合は大丈夫ですが、浸出油を皮膚塗布する場合には光毒性に注意が必要です。

  • セントジョーンズワート Hypericum perforatum オトギリソウ科 開花時の地上部
  • 成分:ヒぺリシン、ハイパーフォリン、タンニン、フラボノイド配糖体
    適応:軽度~中程度のうつ、月経前症候群(PMS)、創傷

光毒性があることで知られている精油には、ベルガモット、レモン、グレープフルーツなどの柑橘系の精油やアンジェリカなどの一部のセリ科の精油があります。光毒性作用を示すのはフロクマリン(フラノクマリン)類の成分といわれており、中でもベルガプテンが非常に強い光毒性作用を示すことで知られています。これらの精油を植物油などで希釈して皮膚に塗布したり、手作り化粧品などに使用する場合には、塗布後4~5時間は紫外線に当てないよう注意する。減圧水蒸気蒸留等の手法によりフロクマリン(ベルガプテン)を低減したフロクマリンフリー製品も販売されていますが、完全に除去されているわけではないので、お肌の弱い方は念のため注意した方がよいでしょう。

  • ベルガモット Citrus bergamia ミカン科 果皮
  • 成分:酢酸リナリル、d-リモネン、リナロール、(微量成分:ベルガプテン、ベルガモチン)
    適応:ストレスケア、不眠

ちなみに、「グレープフルーツジュースは血圧のお薬と一緒に飲まないようにしましょう」というのを聞いたことがありますか?グレープフルーツジュースに含まれる成分が薬物代謝酵素の一種であるCYP3A4を阻害するため、この酵素で代謝されるニフェジピンなどのカルシウム拮抗薬(高血圧薬)の血中濃度が高くなり、薬が効きすぎてしまうためです。このときCYP3A4を阻害している成分はフロクマリン類の一種であるベルガモチンであるといわれており、グレープフルーツジュースはこの成分の含有量が非常に多いのです。

グレープフルーツ

アロマでストレスケア

ストレスイメージ

私たちの体は、外部環境が変わっても体内の環境は常に一定に保つように調整されており、この機能を恒常性(ホメオスタシス)といいます。この恒常性の維持に重要な役割を果たすのが自律神経(交感神経、副交感神経)、内分泌系、免疫系です。季節の変わり目は、気温や気圧などの環境変化によるストレスが大きく、環境変化に対応するため自律神経がフル回転しています。さらに春には入学、卒業、就職、転職などのライフイベントも重なることが多く、社会・心理的なストレスも大きい季節です。このようなストレスの情報は、脳の中の大脳辺縁系と呼ばれる部分でキャッチされ、そのストレス情報が自律神経や内分泌系に伝わり、体に影響を及ぼします。さらにストレスを受けると副腎から抗ストレスホルモン(コルチゾール)が分泌され、血糖値の上昇に加え、免疫系の働きにまで影響を及ぼします。

香りの刺激は大脳辺系に直接作用し、自律神経の中枢である視床下部に影響を与えることから、自律神経の調整における香りの効果に注目が集まっています。精油の良い香りで自律神経を整えストレスケアに役立てましょう。

今回は自律神経のバランスを整えてくれる精油をご紹介します。
嫌いな香りや強すぎる香りはそれ自体がかえってストレスにもなりますので、心地よい香りと感じるものを選んでいただくことも大切です。

  • マジョラム Origanum majorana シソ科 花と茎葉
  • 主要成分:テルピネン-4-オール、α,γ-テルピネン
    爽やかでスパイシーな香りはストレスから心を解放します
  • プチグレン Citrus aurantium ssp. amara ミカン科 葉
  • 主要成分:酢酸リナリル、リナロール、α-テルピネオール、アントラニル酸ジメチル
    フレッシュで爽やかな香りが憂鬱な気分を取り払ってくれます
  • イランイラン Cananga odorata バンレイシ科 花
  • 主要成分:ゲルマクレンD、β-カリオフィレン、α-ファルネセン、酢酸ゲラニル、安息香酸ベンジル
    甘美で人を陶酔させ、心を和ませる香り
    筋肉の痛みや痙攣の緩和から神経系まで幅広く使用できます
  • ラベンダー・アングスティフォリア Lavandula angstifolia シソ科 花穂
  • 主要成分:酢酸リナリル、リナロール
    爽やかな酸味のある香りが心を落ち着かせてくれます
    万能精油ともいわれ、痛みや痙攣の緩和、美肌効果も
  • クラリセージ Salvia sclarea シソ科 花房と茎葉
  • 主要成分:酢酸リナリル、リナロール、スクラレオール
    憂鬱な気分を忘れさせてくれる甘くスパイシーな香り
    エストロゲン様作用があり、更年期障害に伴う症状の緩和にも有効とされています

自然

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