第9話
コロナウイルスって、どうしてこんなに移ってしまうの(6)
突然変異、進化、コウモリのお話
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イケブクロ博士
えっひぇ~ん!前回は、突然変異から、ヒーくんが進化の話を引き出したのう。ワクチーがコロナはダーウィンか、なんてふざけていたのかのぅ。
コロナウイルスの遺伝子RNAに記録された文字(約3万字)を書き写すときに間違えるのが、突然変異だということは、この前ボンテン博士が話した通りじゃ。突然変異はRNAの文字化けじゃな。
文字化けすると、これを翻訳してできたタンパク質も少し変化するのぅ。ウイルスが増える度に、そういうタンパク質がごろごろできてくるんじゃ。 -
ミク
そうすると、ウイルスが増える度に、突然変異したウイルスばかりになってしまいませんか?
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イケブクロ博士
いい質問じゃ、ミク。Marvelousじゃ。
ここはボンテン博士に答えてもらったほうがいいかのぅ? -
ボンテン博士
文字化けした変異ウイルスは、ヒトの細胞のなかでがんがん増えるので、細胞は壊れてしまいます。ウイルスはその細胞から飛び出でてほかの細胞に侵入し、そこで増殖します。
この繰り返しで、細胞から細胞にウイルスは広がって増えていき、一方、細胞は死んでいくのです。 -
ワクチー
ぎょぎょぎょ、こわいな~。
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ボンテン博士
ウイルスが細胞に侵入するところは、ご存じ、この図ですね!この細胞の入り口目指して、細胞を壊したたくさんのウイルスが侵入しようとします。
だから、そこには、いろんな文字化けした変異ウイルスがいます。
そうすると侵入競争になりますね。 -
ワクチー
侵入競争って、いす取りゲームのようなもの?
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ボンテン博士
その通りです。でも、よく気が付きましたね。
ワクチーはすばしっこいから、いす取りゲームに強くて、よく最後まで残るからかな。
さて、ウイルスの場合は、侵入競争に勝って細胞に侵入したものが、また増えます。侵入競争に負けたウイルスは、ふらふらして消えるしかありませんね。
繰り返しますが、コロナウイルスはヒトの細胞の中でしか増えることができないからですね。 -
図1 -
ワクチー
分かったぞー!侵入競争に勝つのは、パズルのピースに付きやすくて侵入しやすいウイルスだー!
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イケブクロ博士
ちびっこワクチーGreatじゃな!いわば勝手な時と位置で、偶然写し間違いして文字化けするRNAから変異ウイルスが増えるのじゃが、次の細胞に侵入するときに、パズルピースの付きやすさで侵入競争して、ふるいをかけられてしまうのじゃ。
それで、付きやすいウイルスだけが増えていくことになるのじゃな。
残りのウイルスは消えていくのぅ。 -
ヒーくん
進化論でいう、自然選択なのですね。
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ワクチー
それが、進化につながるっていうことなの?
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ボンテン博士
その通りです。ところで、イギリスから発生した突然変異ウイルスも、その他南アフリカやブラジルで見つかった突然変異ウイルスも、文字化けしているところは、みなスパイクタンパク質を記録する文字です。
つまり遺伝子RNAに記録された文字のうち、スパイクタンパク質を記録した部分(約1,300文字)のどこかで文字化けしているものばかりが、今のところは見つかっています。
これは何故かというと、ふるいにかけられるところが、図のパズルピースの付きやすさだからだというと、納得できますね。 -
ヒーくん
コロナウイルスの30,000文字で、スパイクタンパク質以外を記録する文字が文字化け変異しても、パズルピースの付きやすさには影響ないから、そういう突然変異ウイルスは自然選択されないということですね。
だから、今見つかっている突然変異ウイルスはスパイクタンパク質の突然変異ウイルスなのだと分かりました。 -
ボンテン博士
突然変異について、ここまでの話はわかりましたか?
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ワクチー
ヒーくん、ミク面白かった~!
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イケブクロ博士
そしたら、コロナウイルスのもとはコウモリからきたことも、すーっと頭に入ってくるんじゃのぅ。コウモリは、空を飛べる唯一の哺乳類じゃがな、
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ワクチー
じゃがなんじゃー?
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イケブクロ博士
じゃが、免疫系がすごく発達しとって、ウイルスをそれこそたくさん持っとる。ウイルスに感染しても病気にならないような並外れた能力じゃな。
そのコウモリが、ヒトの近くで交わることが多くなったのじゃ。特に中国じゃな。
そうすると、コウモリのウイルスが、ヒトの体にも入ってくるわな。コロナウイルスのもとになるウイルスもそこには居たのじゃろうのぅ。
じゃが、ヒトの体に入ってもじゃ、コウモリのウイルスはヒトの細胞に侵入できないのじゃ。 -
ヒーくん
コウモリのウイルスは、コウモリに感染するように自然選択されているわけだから、コウモリとは別の環境に離れて住んでいるヒトには感染しないということですね。
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イケブクロ博士
そうじゃ、そうじゃ、ヒーくん。しかしじゃ、コウモリのコロナウイルスも突然変異するわな。突然変異したウイルスも、ヒトの体に侵入するわな。
そのなかに、たまたまヒトの細胞にあるタンパク質とうまくはまってしまう突然変異ウイルスがいたとするのじゃ。 -
ミク
わかったわ、それが新型コロナウイルスですね。
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イケブクロ博士
そうじゃ、そうじゃ、ミク。コウモリのコロナウイルスのスパイクタンパク質が突然変異したら、そこにたまたま、ヒトの細胞の入り口になってピッタリはまるタンパク質があったということじゃな。それで、そのウイルスはヒトの細胞に侵入できて、増えたのじゃ。これが、新型コロナウイルスじゃ。
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ボンテン博士
新型コロナウイルスは、コウモリのコロナウイルスが突然変異して直接ヒトに感染したという説と、コウモリから別の動物に移って、その動物からヒトに移ったという説があります。
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リバシブル総理
新型コロナウイルスの発生源を調査するのも、中国調査団のだいじな任務の一つになっていますね。