第30話
検査(2)
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シーラ先生
このダージリンは春摘みのファーストスラッシュです。
みずみずしくて爽やかな味ですね。プレーンスコーンにクロッテドクリームをつけると、あっさりとした味がこのダージリンにぴったりですね。
少し自己紹介しましょうか。私はいま、日本とイギリスのケムブリッジと、アイルランドのダブリンを拠点にして語学の教師と生物の講師をしています。今は日本にいることが多く、他の国の仕事は遠隔で済ましています。夫は退職してからアイルランドのリズモアというところの小さな村で暮らしています。
ガーデニングが趣味で、広い庭をイングリッシュガーデンに仕上げているところです。 -
レオン先生
私も一度リズモアのシーラ先生のコテージを訪ねたことがあります。
まだイングリッシュガーデンを設計して、土を耕して均したばかりでしたが、今は村でも評判の美しいガーデンになっているのですね。その庭で、皆さんと一緒にお話できたらいいですね。
私はつい先日100歳になりましたが、まだまだ頑張って、いつか実現させましょう。 -
ミク
レオン先生もシーラ先生も素敵!私の憧れだわ。いつか必ずリズモアに行きますね。
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ワクチー
ぼくは、リバプールとダブリンとリズモアに行きたいな。
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シーラ先生
ミクもワクチーも、ヒーくんも、いつかそうなることを楽しみにしましょう!
さて、検査の話から始めましょう。
コロナウイルスに感染したら、できるだけ早く治療を受けて直すことと共に、他の人に移さないことが大切です。流行を抑えるために、早期検査をして陽性の人、つまり感染した人を隔離することはとても有効な手段であることが分かっています。ただ、この方法は検査の精度が非常に重要になります。
このことについては後でお話しましょう。 -
シーラ先生
コロナ感染防止策というと、世界中の人が口をそろえて、検査、検査と言います。今も述べたように、そのこと自体は間違いありません。ただ私は、それより前にやるべきことがあるということを皆さんにお話ししましょう。
それは、感染しないための方策です。今のコロナ対策の主体になっているのは、感染してからこれをどう抑えるかということですね。
どこの国の政府も、感染することを前提に、これを抑えるための策を練っています。感染しないための策は不可能だと考えているからです。
私は、科学と技術の進歩が、感染しないための方策をすでに可能にしていると考えています。できるのです。感染しない策がうまくいけば、感染してからの策はいわば簡単で単純です。
もちろん、経済活動も日常生活も支障なく実施できます。 -
リバシブル総理
私が総理大臣を務めているリバシブル島では、感染しないための方策を政策の最重点にしてきました。
まわりの島々が、感染拡大、感染爆発に苦しんでいるのに対して、感染者0を保ち続けることができています。
これも、感染しないために、あらゆる策を実施し、人々の意識が高いからだと考えます。 -
シーラ先生
それは、世界で唯一で、一番進んだ方策をしいて居る国ということですね。
検査については、このような背景があることを理解しておきましょう。
では、ヒーくん、コロナウイルスの検査法にはどんなものがあるか、プレゼンすることはできますか? -
ワクチー
ぎょぎょぎょ、いきなり抜き打ち。でもヒーくんなら大丈夫!
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ヒーくん
では、SARS-CoV-2(サースコヴィトゥ)の代表的な3つの検査について説明します。
それは、PCR検査、抗原検査、そして抗体検査の3つです。
PCR検査は、検査したいウイルスの遺伝子を増幅させて検出する検査方法です。鼻や咽頭をぬぐって細胞を採取し、そこに含まれるウイルス遺伝子の量を検査します。
抗原検査は、検査したいウイルスSARS-CoV-2の抗体を用いて、ウイルスが持つ特有のタンパク質(抗原)を検出する検査方法です。インフルエンザの検査で抗原検査はよく使われています。
抗体検査は、過去にそのウイルスに感染していたかを調べる検査です。ウイルスに感染すると形成される抗体が、血液中に存在するかを検査します。
感染してから抗体ができるまで時間がかかるため、現在そのウイルスに感染しているかの判別に用いるのは、難しいところがあります。 以上です。 -
シーラ先生
やはりヒーくんに説明してもらってよかったわ。つぎに、個々の検査法について少し詳しく説明しましょう。
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イケブクロ博士
よっしゃー、よしゃよしゃ、シーラ先生。この続きはまた次に。